セミナー・シンポジウム

薮中三十二特任教授OPEN教室「2022年 日本外交の針路“Challenges for Japanese Diplomacy in 2022”」

2022年1月17日、OSIPP棟2階講義シアターにおいてOPEN教室「2022年 日本外交の針路“Challenges for Japanese Diplomacy in 2022”」が開催された。会場では感染症拡大防止策を徹底しつつ、オンライン参加も可能なハイブリッド形式をとり、講義は全て英語で行われた。大阪大学法学部OBで元外務事務次官の薮中三十二特任教授が、近年緊張が高まる国際情勢と日本政府の対応について語った。

 

はじめに、近年の「一触即発」のケースとして、台湾と中国、ウクライナとロシア、イランとイスラエルの事例を紹介した。それぞれ、中国にとっては台湾独立が、ロシアにとってはウクライナのNATO加盟が、イスラエルにとってはイランの核兵器開発が“red line”であると話した。また、それらの問題と、アメリカ・ヨーロッパ諸国の関わり方を紹介し、日本政府の対応について参加した学生と議論した。

 

講義後半では主題を中国情勢に移し、米中間の競争や、日中間の領土問題、台湾問題の現状を説明した。米中両国では、相手国に抱く国民感情が悪化していると指摘があった。その上で、参加した日本人の学生に中国に対する感情について尋ね、その感情を抱く理由について社会的背景や各国政府の対応等の観点から、時間をかけて学生と議論した。議論には日本人学生だけでなく、中国出身の学生や、それ以外の国出身の学生らも参加し、多様な視点から議論が深まった。また、メディアの報道方法にも議論が及び、日本メディアの中国に対する報道姿勢とその原因についても意見が飛び交った。

 

現在、世界で起こっていることを俯瞰して見た後に、それらの問題と日本との関係性について考察するという授業の構成により、体系的に国際情勢と日本の状況を理解することが出来る講義であった。また、講義内ではディスカッションの時間が多く取られており、様々なバックグラウンドを持った学生が意見を交わしたことで、今までなかった新たな視点で問題を捉えることができ、学びになった。

(OSIPP博士前期課程 中瀬悠)

左側から、GLP事務局の方々、対面参加の学生、薮中先生(右から6番目)で記念撮影。今回で今年度の授業は終了。