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第6回大阪大学豊中地区研究交流会 -知の共創-

OSIPPからは須永美穂助教・中村信之特任研究員が発表


2021年12月21日、第6回大阪大学豊中地区研究交流会「知の共創」がオンライン会議システムRemoを利用して開催された。このイベントは、豊中キャンパスに在籍する研究者・学生が文系理系問わず様々な研究成果を報告し、交流する場である。
(写真:須永美穂先生(左下)が発表中)

 

参加者は、興味のあるポスター発表が行われているオンライン上の部屋に入ると、その発表を聞くことができるシステムとなっている。OSIPPからは須永美穂助教、中村信之特任研究員が発表した。約4時間半にわたり開催された交流会は、先ずは西尾章治郎総長のビデオレターによる挨拶から始まり、続いてポスター発表形式での研究発表や情報交換会が行われた。

須永先生は「高齢化社会はリスク回避的になり、その経済は持続的に成長できないのか?」というタイトルで、若年世代と高齢世代のリスクに対する行動の違いを考慮したとき、高齢化が経済全体に与える影響に関する研究を発表した。高齢世代が若年世代よりはるかにリスク回避的であれば高齢化により経済成長が阻害され、高齢世代がリスクを取るようになれば若者が多い社会と同様、持続的な経済成長が可能になるという結果を得ることとなった。発表を聞いた法学系の先生からはヨーロッパのデータを考慮した場合とアジアのデータを考慮した場合で研究結果にどのような違いが出るのかについて質問が出ていた。

中村信之先生(左上)が発表中

中村先生は「貫戦期における帝国間の文化交流 ―日米学生会議と日比学生会議を題材に」というタイトルで、1930年代~1950年代の貫戦期における文化交流(学生間の交流)の実態や意味に関する研究を発表した。当時の文化交流は、国際主義と呼ばれる国際的な相互理解やルール作りを重要視する立場から評価すれば「国家間」の理解の促進に終始しており、多くの参加が見られた日系2世のような両国にアイデンティティを持つ人を理解しない例も見られ、トランスナショナリズムよりもナショナリズムが重視された。さらに、戦前の文化交流の目的が、日本は自国の帝国主義や満州政策について米国国民から理解を得ること、米国側はリベラリズム・民主主義を広めることであり、互いのイデオロギーをぶつけ合い影響しあおうとしていたことが分かった。

豊中キャンパスは基礎工学研究科などの理系の研究科と国際公共政策研究科などの人文社会科学系の研究科が混在している。それ故に、西尾総長の挨拶にあったように「宇宙レベルの話から細胞の話まで、古代から未来の話まで」という、多様な研究の発表を聞くことができた。また、このイベントの参加対象者は教職員・学生だけではなく、企業関係者、自治体関係者、関心を持つ一般の方までと非常に広く、開始時点で100人近い参加者が集まっていた。その結果、「知の共創」というタイトルにふさわしく、新しい視点からの質問が多く出ることとなり、大阪大学が目指す分野横断的・産学連携に貢献するイベントであった。

(OSIPP博士前期課程 岡春陽)