2022.2.15
OSIPP基幹講座教員の1月の研究業績をご紹介します。
・大久保邦彦先生
・木戸衛一先生
大久保邦彦(論文)
「信託における取戻権・第三者異議権の法原理的基礎」『信託研究奨励金論集』 第42号 59-83頁
(2021年11月)https://www.shintaku-kyokai.or.jp/archives/007/202201/42-04.pdf
概要:信託研究奨励金の成果論文であり、ドイツ・オーストリア法を参照して、委託者の取戻権・第三者異議権を基礎づける法原理の探究を試みた。取戻権は、独・墺では、信託の終了時に財産を委託者兼受益者に引き渡すことを目的とするのに対して、日本法では、信託の継続を前提として信託財産からの財産の逸出を防止することを目的とする。このように独・墺と日本とで取戻権の内容が異なるため、優先権を基礎づける法原理が機能する場面や仕方も異なる。まず、取戻権に対して消極的に作用する委託者による信用供与は、委託者への引渡しが問題とならない日本法においては、機能の余地がない。また、日本法では、信託の登記・登録をすることができない財産については、特定性があれば、公示がなくてもその財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができるため、受託者の個人債権者の信頼保護は軽視されている。そのため、価値追跡思想は、日本信託法では独・墺よりも強い法原理として機能している。
大久保邦彦(論文)
「不正競争に基づく不当利得責任」『阪大法学』 71巻5号(2022年1月) 1195-1238頁
概要:不正競争防止法は「不正競争」として禁止される行為類型を限定列挙し、不正競争によって営業上の利益を侵害された者に差止請求権・損害賠償請求権等を与えているが、不当利得については規定がない。わが国の民法学説では、不当利得返還請求を否定する説が優勢だが、不正競争に基づく不当利得返還請求を不正競争が成立しないという理由で棄却した裁判例が見られる。他方、ドイツの学説では、全面的否定説はすでに克服され、現在ではいかなる要件の下で不正競争について不当利得が成立するかが争われている(判例はない)。本稿では、この問題に関する日本とドイツ・オーストリアの主要な学説を紹介・検討した後、自由の画定方法や知的財産法・競争秩序を含むやや広い見地からこの問題に対して考察を加え、問題解決のために検討すべき課題を提示している。
木戸衛一(その他の記事)
「ドイツ総選挙をどう見るか」『前衛』No.1009(2022年2月発行) 日本共産党中央委員会理論政治誌
概要:ドイツで2021年9月26日に行われた連邦議会選挙の投票分析を中心に、アンゲラ・メルケル(キリスト教民主同盟)前首相の成果と問題点と、オラーフ・ショルツ(社会民主党)新「信号連合」政権が直面する課題を解説した。
※論文に関しては、査読に関する記載のないものは査読のない論文です。