セミナー・シンポジウム

サブリ・キチマリ氏(駐日コソボ大使)特別講義
「ロシアのウクライナ侵略に見る南東欧」

サブリ・キチマリ氏(駐日コソボ大使)特別講義
「ロシアのウクライナ侵略に見る南東欧」

2022年5月20日、文法経講義棟42番教室にて、OSIPP教授星野俊也先生の「安全保障論」の講義の一環として、サブリ・キチマリ駐日コソボ大使による特別講義「ロシアのウクライナ侵略に見る南東欧」が行われた。対面とオンラインのハイブリット方式で実施され、約60人の学生が参加した。

 

特別講義の冒頭で、キチマリ大使よりコソボ(首都:ブリシュティナ)は冷戦後の1990年代にセルビア共和国からの独立運動の過程で悲惨な紛争を経て2008年に独立し、民主的な価値を広く共有しているとの紹介があった。

その後、旧ソ連と旧ユーゴスラビアの解体から新国家の建設に至ったという南東欧の歴史的な背景を解説し、そのことを踏まえて、ロシアのウクライナ侵攻について南東欧の視点から分析した。ロシアのウクライナ侵攻は南東欧に地政学的な影響を及ぼしており、セルビアのような親ロシア派と、コソボのような親西欧側派に、国によって意見が分かれていると述べた。また、ロシアによる侵攻が長引く中、ウクライナから国際的な関心をそらすために、ロシアが親ロシア派の少数民族を保護するという名のもとコソボに対して挑発行為を起こす可能性に懸念を示した。しかし、コソボや日本、欧米諸国などが団結してロシアの暴力に反対していることに希望を持っていると述べ、国際協力の重要性を強調した。

キチマリ大使は度々ヨーロッパの地図を用いて国々の位置関係を示しながら地政学的背景を説明し、日本から地理的に離れたコソボや南東欧地域についての深い理解を促した。コソボの歴史や周辺国との関係を示し、それらと現在のウクライナ情勢との関連性を説明するというダイナミックな講義構成により、体系的に南東欧の歴史と現状、そしてロシアとウクライナの2カ国間の関係を超えた視点からのウクライナ情勢を学ぶことができた。激しい紛争を経験したコソボの大使による平和を求める言葉には説得力があり、大使が講義で強調していた「ロシアに対して“unite(団結)”した姿勢を保つ必要性」を十分理解することができた講義であった。

(法学部国際公共政策学科・池内里桜)