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研究科長就任インタビュー 

研究科長就任インタビュー 


2023年4月にOSIPP第14代研究科長に就任した中嶋啓雄先生にお話を伺いました。(写真:豊中キャンパス OSIPP棟近くにて撮影)

 

 

 

先生のこれまでの経歴と研究の概要を簡単に教えてください。

カナダにある新渡戸記念庭園にて

私は2007年の大阪大学と大阪外国語大学の統合に伴い、大阪外国語大学から国際公共政策研究科(OSIPP)に移籍しました。OSIPPでの在籍は既に15年以上となり、いつの間にか最古参の一人となりました。専門としている研究分野はアメリカ外交史です。元々は19世紀前半に表明されたモンロー・ドクトリンの研究をしていましたが、現在は日米文化外交を主に研究しています。チャールズ・A・ビアードというアメリカの政治学者についての研究をしているなかで、ビアードは新渡戸稲造の弟子である高木八尺や松本重治と交流があったことがわかりました。写真は2018年春に訪れたカナダのブリティッシュ・コロンビア大学の新渡戸記念庭園で撮ったものです。この庭園は、新渡戸稲造が「太平洋の橋」となることを目指し、カナダで開催された太平洋問題調査会(IPR)の国際会議に出席した後にブリティッシュ・コロンビア州で客死したことから、彼を記念して作られたものです。私はこのような学者間の交流と日米関係に関心を持っています。

<中嶋先生の研究紹介>
OSIPP公式HP:https://www.osipp.osaka-u.ac.jp/ja/osipp-faculty/nakajima-hiroo/
OSIPPNews:https://news.osipp.osaka-u.ac.jp/?p=7580

 

長年のOSIPPでの在籍を踏まえ、OSIPPの魅力や近年のOSIPPの研究・教育の特徴などを教えてください。

OSIPPの特徴は、学際的な研究活動と公共政策に役立つ実務面の教育の両方に力を入れている点です。学際的な研究活動に関しては、教員も学生も多様な研究分野やテーマに携わっているため、学生は自由な発想で関心を追求し、分野を超えた視点を身につけることができます。近年では、法・政治・経済分野の教育がより細分化され、専門性のレベルが上がっています。そのため、専門性の追求が可能になった一方、分野を超えて広く学ぶ学生が減っている印象もありますが、OSIPPでは専門性も高めつつもさまざまな学問分野に触れる機会を生かして多角的視点を身に付けてほしいと考えています。実務性に関しては、公共政策大学院として社会とのつながりを意識したプログラムやカリキュラムが充実しており、Global Leadership Programや新聞社と共同で開講する授業などを用意しています。このような実務に役立つ学びとアカデミックな学びが相乗効果をもたらすことを期待しています。また、近年では海外経験のある教員が増えたことで、英語による授業や研究発表が増加しているのも特徴です。オンライン化が進んだことにより世界が一層狭くなっているので、国境を超えて活躍する学生や教員を支援したいと考えています。

 

研究科長としての抱負を教えてください。

研究科長に就任したことで、OSIPP内の出来事により一層注目し、OSIPPに関わる様々な人々の意見や思いに耳を傾けたいと考えています。私は「人間目安箱」として、教員や学生、さらには事務スタッフや修了生まで、OSIPPに関わる多様な人々のニーズを把握し、それを反映させていくことを目指しています。例えば、教員やスタッフの中には、コロナ禍により人との距離が離れ、気軽に相談する機会が減少したため、相談相手が分からず自分のやりたいことが形になっていないと感じる人もいることがわかりました。最近では、さまざまな方面の意見を聞いて調整することの難しさを再認識していますが、風通しの良い組織を目指し、研究科内で起こる出来事に注意を払っていきたいです。研究科長室に閉じこもってしまうと見えなくなる部分もあると考えますので、OSIPPに関連する様々なイベントに積極的に参加し、OSIPP棟や豊中総合学館の廊下を歩く際にも周囲の人々の表情に注意を払い、皆さんの思いを少しでもキャッチできるよう心がけたいと思います。さらに、社会とのつながりも重要視していきたいです。昨年、赤井前研究科長の指揮のもとで同窓会活動を始め、各方面で活躍するさまざまな修了生と現役の学生や教職員との交流の機会を作りました。OSIPP30周年の際には、対面での記念式典の開催も目指しています。

 

OSIPPに関心を持っている方や在校生に対してメッセージをお願いします。

OSIPPでは、研究テーマやアプローチの仕方に大きな制約がなく、やりたいことを自由に追求することができるところが魅力です。教員のみならず学生においても、データを使い定量的な分析をする人から歴史的資料を分析する人、政策提言に関わる人から国際機関や政府機関での実務経験がある人など様々です。また、OSIPPには留学生が多く、学生間の交流の機会がたくさんあります。ここで得たネットワークは、将来、国際的に協働するパートナーとなり得るつながりとして大切にしてください。後に振り返ると、大学院生時代の自由な時間は貴重だったと感じるでしょう。心身の健康にも気を配りつつ、精一杯頑張ってください。

(OSIPP博士前期課程 池内里桜)