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【My Favorite】石瀬寛和准教授「Frank Lloyd Wright」

【My Favorite】
このシリーズでは、OSIPP教員の“推し”をご紹介します。


 

石瀬寛和准教授「Frank Lloyd Wright」

 

 

このマグカップ (写真) は私が研究室で使っているもので、フランク・ロイド・ライト (Frank Lloyd Wright) がデザインしたステンドグラスから取られたものです。

ライトは20世紀前半に活躍したアメリカ合衆国出身の建築家です。地面との平行線を強調した低い屋根に広く窓を配置し、外の自然と一体化した感覚を持たせる建物を多く残しました。ここで指している外の自然はアメリカ中西部の大草原であり、そこからこの建築様式は Prairie Style (大草原の様式) と呼ばれています。また、ライトはステンドグラスや柱、家具に至るまで直線や円、多角形などの幾何学模様を用いた装飾を多く用いました。

Robie House(米イリノイ州シカゴ)世界遺産

代表的な作品に (一番代表とされるにもかかわらずここで紹介する建物のうち唯一私が未訪問の) ペンシルバニア州西部の山中にある Fallingwater やシカゴにある Robie House (写真: 説明の看板のある建物) などがあります。大きな建物として今も使われているものがニューヨークにある Guggenheim Museum です。螺旋の建物の壁に配置された絵画を下りながら鑑賞していく一風変わった趣向の美術館です。比較的若い時期に設計された建物群はシカゴの郊外の Oak Park 市にまとまってあります。また、中年期以降に自宅兼後進を指導する学校にした建物群が、夏を過ごしたウィスコンシン州 (写真: 塔のある建物) と冬を過ごしたアリゾナ州 (写真: プールのある建物) にあります。

左:Taliesin West(米アリゾナ州フェニックス)世界遺産
右:Taliesin(米ウィスコンシン州スプリング・グリーン)世界遺産

こうして並べてみるとアメリカ合衆国の各地に点在する彼の建物をずいぶんと”聖地巡礼”したものだと我ながらびっくりするところです。もともと建築に興味があったわけでは全くなく、建築で学士の学位を取った妻の趣味につきあって旅行の日程に建物訪問を入れているうちに自分もはまってしまい、ライトの建物訪問を中心とした旅行をするまでになったのです。
浮世絵など日本美術に関心を持っていたこともあって、彼は日本にも作品を残しています。東京の帝国ホテルはいま建て替え工事を行っているところですが、これから立て替えられる本館の前の代にあたる本館を設計したのがライトでした。残念ながら前回の建て替えで壊されてしまいましたが、ロビーを含む正面玄関は愛知県犬山市にある明治村に移築され、いまも中を見ることができます。正面玄関だけと言っても戦前の日本が外国からの賓客をもてなすために威信をかけて造った建物で、その威容に圧倒されるとともに、細部まで意匠が凝らされたライトの設計の美しさに目を見張らされます。
そして、ここ大阪からもっと身近なところ、兵庫県芦屋市に彼の遺した建物があります。帝国ホテル設計のために日本に滞在していたライトに灘の酒造家、山邑太左衛門が別邸として設計を依頼した建物です。その後、淀川製鋼所が買い取り、現在はヨドコウ迎賓館として一般公開されています。別邸と言っても戦前の日本の資産家の建物だけあって大きな住宅です。堺から神戸までを見渡せる高台に大草原様式の館が建っているのも奇異ですが、これはこれで不思議と調和がとれています。低い屋根は地平線ならぬ水平線との平行線と考えるとそう不自然ではないのかもしれません。建物内の細かい意匠 (写真: 室内) もまさにライトのもので非常に楽しいものです。休日の息抜きに、是非一度いらしてみては如何でしょうか。

ヨドコウ迎賓館(兵庫県芦屋市)